コンサルティングファームに所属していると、仮説思考、ロジカルシンキングといったスキルが重視されます。
実際にこれらのスキルは非常に重要で、コンサルスキルの中でもコアスキルと言われており、ビジネスをする上では必要不可欠なスキルです。
しかし、ロジカルシンキング(論理的思考)には弱点があります。
論理的思考は、決まった課題・問題を早く、正確に解くには優れたツールですが、新しいアイデアを出したり、新規に問題を設定する際には、あまり有効に働きません。
そこで登場する考え方が「デザイン思考 – Design Thinking」です。
デザイン思考は、デザイナーがデザインをする際の思考過程を一般的に表したフレームワークであり、歴史のある考え方ですが、最近はこれをビジネスに適用する動きが活発になっています。
私が考える次世代型の思考法は、論理的思考とデザイン思考のハイブリッドです。
それでは詳しく解説していきます。
Contents
ロジカルシンキング(論理的思考)の限界
論理的思考は非常に有力なツールです。
私はロジカルシンキングを一切否定しませんし、今後も最重要ツールとして君臨し続けると思います。
論理的であるということは、正しいということです。
論理(ロジック)は、地球上の誰にとっても同じものであり、同じ事実から導き出される答えは、論理的に正しければ、等しく同じ答えになります。
言語は違えど、ロジックは全世界の共通言語なのです。
しかし、テクノロジーの発展により、世の中には情報やサービスが溢れ、市場の奪い合いはこれまで以上に早く、激しく行われるようになりました。
当然、コンサルタントとしてはこの状況に対応すべくクライアントの利益最大化を図るために、事実(ファクト)に基づき、論理的に正しい答えを出そうとします。
事実(ファクト)は、過去の事例です。
すでに存在しているということは、その時点で過去のものということです。
非常に変化が激しい状況では、過去の事例を参考にすることができなくなります。
つまり、論理的思考の根っこであるファクトが揺らいでしまうのです。
コンサルタントが出す付加価値は、ファクトに基づく示唆(インサイト)です。
そのファクトがクライアントの事例に合わないものになれば、提供する示唆も価値が低いものになってしまいます。
ロジカルシンキングは機械にとっても共通言語
論理的に正しい結果を出してくれるものとして、私たちが最もよく使っているものがPCやスマートフォンです。
機械を動かすにも、論理的に正しく動くように設計されます。
最終的には論理的思考は、部分的に機械に代替される部分が出てきます。
上述した通り、過去の事例(ファクト)に基づき、論理的思考を使う問題解決の究極系は、ネットワーク上に蓄積されたデータから、自分が直面している問題とその解決策を正しく、自動的に引っ張ってくることです。
このような状況になれば、論理的思考だけを武器にしているコンサルタントの価値はなくなってしまうでしょう。
デザイン思考の台頭
これまでデザインとビジネスは、あまり関わりがないように考えられてきました。
企業における問題解決の目的は「売上の向上」もしくは「コストの削減」に収束します。
自社、他社の定量的なデータから、論理的に正しい示唆を用いて、顧客を「正しい」方向に先導するコンサルタントが非常に重宝されます。
そこにはあまりデザインの入り込む隙はありませんでした。
(広告など一部のビジネスは、非常にデザインと関連性が高い事業ですが)
しかし、過去の事例から未来の解決策を導き出す方法に疑問符が付き始めた昨今では、現状をよく観察し、現状から問題を定義し、解決策を考えていく方法の方が、より適した結果が出ると考えられ始めました。
そのための方法が「デザイン思考」です。
“Design thinking is a human-centered approach to innovation that draws from the designer’s toolkit to integrate the needs of people, the possibilities of technology, and the requirements for business success.”
– Tim Brown, CEO of IDEOThinking like a designer can transform the way organizations develop products, services, processes, and strategy. This approach, which IDEO calls design thinking, brings together what is desirable from a human point of view with what is technologically feasible and economically viable. It also allows people who aren’t trained as designers to use creative tools to address a vast range of challenges.
(出典:IDEOU, Design Thinking: A Method for Creative Problem Solving)
デザイン思考は、現状をよく観察するところから始まります。
過去の事例やデータを分析するのではなく、今、目の前で起こっていることを観察します。
観察した事象から、問題を定義し、解決策のアイデアを複数出します。
そして、最も有効であろう解決策の1つの試作品(プロトタイプ)を作ります。(ここが論理的な問題解決と最も違うところ)
試作品を基にテスト、検証を行い、ブラッシュアップしていきます。
デザイナーの方に話を聞くと、やはり上記のプロセスでデザインをしていることが多いとのことです。
デザイン思考という言葉は知らなくても、デザイナーの頭の中はやはり「デザイン思考」であったということです。
このデザイン思考をビジネスに応用することで、既定路線の延長線上にはない解決策(イノベーション)を生み出すことができるとして注目されています。
思考の発散と収束が重要
いきなりですが、デザインファームIDEOのCEOティム・ブラウン氏の言葉を紹介します。
現在の解決策が徐々に使い物にならなくなってきたので、この変化の時代には、私たちは新しい選択肢が必要なのです。
そこで、なぜデザイン思考なのか?
なぜなら、新しい問題対処の方法を与えてくれるのです。利用可能な選択肢の中からベストを選ぶという、従来の収束的なアプローチにとどまる代わりに、デザイン思考は発散的なアプローチをとり、今までになかった新しい選択肢、新しい解決策、考え方を探索させてくれます。
デザイン思考は発散型の思考です。
論理的思考は収束型の思考です。
論理的思考だけでは、過去のデータから収束させて解決策に至るので、イノベーションは起こりにくいです。
収束に至るまでに、発散のフェーズを挟むことで、これまで思いつかなかった解決策に至る可能性があるのです。
デザイン思考だけでは、アイデアを出してから実現可能な解決策には導くことができない。
論理的思考だけでは、これまでになかった解決策を導くことはできない。
この両方の思考法が交わることで初めて、これから求められる次世代型の思考法になります。
次世代型の思考法について話すイベントを開催します
こちらのイベントは無事2019年8月10日に終了しました!
デザイン思考型の問題解決のプロであるデザイナーの前田高志さんと対談イベントを開催します。
これまで記載した時代背景をもとに、これから求められる問題解決の方法論や、キャリアについてお話します。
「デザイナー」と「コンサルタント」として、また「個人」と「サラリーマン」として、ビジネスの第一線で戦っている2人が対談させていただきます。
対談内容
1部 : デザイナーとコンサルタントの問題解決に向けた頭の使い方
デザイン思考と論理的思考の考え方から、クライアントからの問題(課題)を解決を依頼されたときのデザイナーの頭の使い方と、コンサルタントの頭の使い方の違いについてお話します。
これまでの2人の経験をもとに、仕事における問題に直面した際の右脳と左脳の使い方を紐解いていきます。
2部 : 終身雇用崩壊後の日本でのキャリアの積み上げ方
前田さんの任天堂卒業から、前田デザイン室立ち上げ、個人の名前でブランディングしていく方法論などを、にぃやんから前田さんへの質問形式で進めていきます。
※対談内容は変更する可能性がありますので、ご了承ください。
対談者プロフィール
現役外資コンサル戦士 にぃやん
某外資系コンサルティングファーム/サイバーセキュリティコンサルタント
新卒で大手通信会社に入社し、法人営業として活躍。その後、外資系コンサルティングファームに転職し、サイバーセキュリティコンサルタントとして従事。サラリーマンとしてのキャリアを伸ばしつつ、サラリーマン経験で得たスキルや強みを活かして、会社以外のコミュニティでの活躍を模索。自身のブログである「現役外資コンサルタントの内部事情リークブログ」でコンサルティングファームの内情や、コンサル志望者に向た情報を発信。
前田 高志(まえだ・たかし)
株式会社NASU 代表取締役/アートディレクター
前田デザイン室 代表
大阪芸術大学・専門学校HAL非常勤講師
兵庫県生まれ。 2001年大阪芸術大学デザイン学科卒業、同年任天堂入社。任天堂宣伝部門のデザインチームリーダーを経て2016年「NASU」を設立をし、グラフィックデザインに従事。幻冬舎・箕輪厚介氏のオンラインサロン「箕輪編集室」での活動を経てオンラインサロン「前田デザイン室」をスタート。メンバーたちと作った雑誌『マエボン』『NASU本』を刊行。コルク・佐渡島庸平さんとの出会いをきっかけに本来の夢であった漫画家を目指すことに。デザイン、大学、コミュニティ運営、漫画と活動は多岐にわたる。
場所
東京都中央区八重洲1-7-17 八重洲ロータリービル4階
東京駅八重洲北口出てすぐの横断歩道を渡り、右手にありますSMBC日興証券の隣のビルになります。
日程、時間
2019年8月10日(土) 15:00 – 16:30
※こちらのイベントは終了しました。