コンサル全般

【体験談】営業から完全未経験のコンサルタントに転職した最初の1年が地獄だった話

この記事では、営業から未経験でも外資コンサルに転職した“後”の地獄の日々を書き連ねています。

具体的な転職方法などは書いていませんので、ご了承ください…。

私はもともと新入社員で大手通信会社に入社し、法人営業としてキャリアをスタートさせました。

大学も文系の学部卒で、英語も話せないし、ITスキル(プログラミングとか、サーバー言語とか、ネットワーク構築とか)もない人材でした。

法人営業を6年経験して、日本を代表するような有名なクライアントともお仕事ができるレベルになったと感じ、さらに年齢も30歳に近くなったことから転職を考えました。

この時の転職へのモチベーションはこんな感じでした。

  • 当時所属していた会社の将来性が見えなかった事
  • 逆に自分の将来が見えてしまった事
  • 市場価値の高いスキルがない
  • お金がない

そこで、

  • 多少忙しくても、自分に箔がつく仕事をしたい
  • 世界でも有名な会社で働きたい
  • 年収を上げたい

ということで、外資系の有名なコンサルティングファームに転職することにしました。
無事内定をもらうことができ、外資コンサルとしてのキャリアをスタートさせました。

何もわからなかった最初の3か月

転職した直後は、コンサルタントの働き方(プロジェクト制など)、上司との距離感、仕事の進め方など全てが分からない状態でした。
法人営業時代に大手の顧客からも満足頂いていた経験と若さもあって、少し天狗になっていた時期でもありました。
コンサルタントになった当初に作成したアウトプットは、ことごとく当時の上司に直されました。

こんなものを作るのに何時間かけてんの?
お前の単価はいくらか知ってる?
これにその価値あると思う?

こんな言葉もかけられながらの毎日だったので、だんだん自分の仕事に対する自信がなくなっていくのを感じました。
今までは自分が正しいと信じて進めてきた業務の”正しさ”が分からなくなっていました。
なので、本当に新入社員のように、これで良いですか?この進め方で良いですか?と本当に何をするにしても上司に確認しながら仕事を進めていました。
当然、上司もそんな細かいことでいちいち聞いてくるなとなりますし、私としても話す度に罵倒される、でも自分で進めるとまた修正が大きくなるから、聞かないと…と本当に悪循環に陥っていたのです。

本当にこのころは辛かったです。
自分が今、何の仕事をしていて、自分が今、作っている資料が何のためになるのかも正確に理解できていませんでした。

社内外の打合せに出ても、打合せの内容が理解できない。
理解していたと思っていても、その理解が間違っていて、上司、同僚と話が通じない。
同じ日本語で会話しているはずなのに、自分だけが理解できていない。
そこでまた罵倒される。

その状態でタスクを振られる。
タスクの位置づけ、アウトプットの方向性などが合うはずがない。
もはや、上司や同僚に確認することも遠慮してしまう。
そのままタスクをこなす。
当然、ずれる。
また罵倒される。

その時に私がGoogleで調べていたのは、こんなキーワードでした。

頭 悪くなる
頭 おかしくなった
人の話 理解できなくなった
発達障害 後天性

この頃はもう自分のことがほとんど信じられない状態でした。
真剣に仕事に取組み、本気で作った資料も、一瞬でなかったことになるのです。
社会人になってから、そんなことは一度もなかったです。
ある程度、仕事ができる人、として社会人生活を送ってきました。
そんな私がこんなキーワードで検索しているのです。

特に病院などは行っていませんが、客観的に見ても、少しメンタルがおかしくなってきていたのだと思います。

これで17時半とかに仕事を終えて、帰れていればまた少し精神状態もましだったのかもしれませんが、当然そんなことはありません。
毎日家に帰るのは12時を過ぎていました。
終電で帰った後も、PCで作業をしつつ、上司や同僚とウェブ会議をつないで議論。
2時、3時まで作業が続くこともしばしば。
(まぁコンサル業界では、よくあることだと思います。)

こんな状態が約半年続きました。

光明がさしてきたのは半年後

こんな状態でもやってこれたのは、自分のメンタルの強さと、ここで負けると辛かったこと全てがなかったことになる、自分のキャリアに傷が付くといったプライドの高さもあったと思います。

プライドは持っていた方が良いと思います。
自分は今まで多少の困難も乗り越えてきた。
だから、ここで終わるはずがない。
これもまた、乗り越えられるはずだ、と言い聞かせていました。

6月に転職をしたので、12月も半ばを迎え、その日はやってきました。
なぜかいきなり、資料の作り方、資料のストーリー(言いたい事)の組み立て方、打合せの目的、作業内容の先読みなど、いろいろなものが見えてくるようになったのです。

これは自分でも本当に驚きでした。
この日を境に、私のパフォーマンスは客観的に見てもかなり高まりました。
これは、その当時、私に多くの罵声を浴びせてきた上司からも言われました。
「覚醒したな」

この日以来、上司との関係も回復し、打合せなどの場でも建設的なディスカッションができるようになりました。

そこで、自分自身がなぜ覚醒したのかを分析しました。
大きく2つあると考えています。

  1. 営業からコンサルタントとしての考え方に切り替わった
  2. 表現のテンプレートが蓄積された

ひとつ、ひとつ解説していきます。

営業からコンサルタントとしての考え方に切り替わった

営業時代は、簡単に言うと八方美人に仕事をしていました。
良い悪いではなく、事実としてそうでした。
顧客からの要望、上司(会社)の要望、社内(SEや商品企画側など)からの要望を、全て調整しながら最終的に顧客に提案を持っていくというスタイルでした。
もちろん、営業なので顧客からの要望を最優先に社内を調整することになります。
(いちゃもんやクレームに分類されるようなものは無視しています。)
あくまで顧客からするとベンダー(業務委託先)の営業なので、基本的には顧客からの要望を叶えることが、営業の役割になります。
ただの御用聞き営業じゃないかと思われるかもしれませんが、大手ITベンダーの営業で顧客からの要望に対し、ベンダー側の意思を優先して対応することはできません。
これは営業能力の有無ではなく、自分が所属する会社の役割として、そのような役割だからです。
そこで顧客(社外)と社内の”落としどころ”(それぞれの要望をある程度叶えることができる提案)を自分で探りながら、そこに向けて調整していくという思考回路が醸成されていきました。
これがいわゆる八方美人の仕事のやり方です。

しかし、コンサルタントになってからは、この思考回路は使えませんでした。
それに気付くまでが一番しんどかったです。
コンサルタントに必要な思考回路は、八方美人ではなく、現実主義でした。
顧客へ現実的な最適解を提示することが、最も重要な能力でした。

営業の言葉の使い方は、
「~という要望を伺いましたので、こちらのサービスの●●な機能により、ご要望を叶えることができます。」

コンサルタントの言葉の使い方は、
「~という要望があります。そこにたどり着くまでのステップが3つあります。現状は、●●ですので、まずはステップ1から構築すべきと考えます。」

顧客の要望を正確に理解できるのは当然ですが、コンサルタントに求められる能力は、自分の意見です。
「現状」と「顧客が求める姿」の間を埋めるために、どのようにすべきか(自分の意思)を提示することが求められます。

営業時代に、自分の意思ではなく”落としどころ”を探るために使っていた脳の回路とは、全く別の回路を構築しないと対応できませんでした。
この回路ができるまでに6か月(約半年)かかりました。

表現のテンプレートが蓄積された

ここでいう表現のテンプレートとは、パワーポイントでの表現の仕方です。
テンプレートが蓄積されたとは、ネットで落ちている何も書いていないデザインが整っているパワポのデータをかき集めたとかではなく、自分が言いたい事を表現できる方法が自分の中に数パターンたまったということです。

コンサルタントの成果物は、ほとんどがパワーポイントで作成します。
成果物といっても多岐にわたります。
プロジェクトの進捗資料、プロジェクトの中の1テーマに関する検討資料、関係者への説明資料など、場面や目的によって作るべき資料も変わってきます。
営業時代に作っていた資料は、主に提案書と呼ばれるものでした。

提案書の骨子は、(だいたい)以下のようになっています。

  • 表紙
  • 弊社の理解
  • 貴社のあるべき姿
  • 課題
  • 提案サービス
  • スケジュール
  • 見積(金額)、見積条件

検討資料の骨子は、以下のような感じです。

  • 表示
  • 目次(アジェンダ)
  • 本資料の目的
  • 課題
  • 解決方法(複数)
  • 解決方法のメリデメ
  • 推奨案
  • 参考資料(Appendix)

私は提案書しか作ったことがなく、コンサルタントが作る資料が、どのような構成になっていて、そこで何を表現すれば良いのかが全く分かりませんでした。
この構成と表現のパターンが、自分の中で、ある程度たまってきて、自分の好きなときに引き出すことが出来るようになって初めて、スムーズに資料を作成することができるようになりました。
そうなると、型(テンプレート)が決まってくるので、あとは中身によって、内容を変えていくだけで資料を作ることが出来るので、資料作成にかかる時間は大幅に改善しました。

資料作成にかかる時間が短くなると、その分、「思考」と「上司とのレビュー」に時間を使うことが出来るので、さらにアウトプットの質が高くなります。

この資料を作成するための最低限のテンプレートが、自分の中にたまるのにも、約半年の時間を費やしました。

その後の半年

コンサルタントとしての考え方(思考)とテンプレートの地盤が構築されてからは、本当に見える世界が変わりました。
打合せの目的や論点も理解できるし、今後自分たちが進めていくためのステップを見通すことができるし、そのために今、作成すべき資料を作ることが出来るようになりました。
正直、パフォーマンスが上がってきたのはここからでした。
最初の半年は、ぎりぎり標準の評価でなんとか保っていたという状態でしたが、後半の半年は良い評価をもらうことができ、最終的な評価時期には、最高評価を得るまでに成長することが出来ました。
その時の評価コメントでは、タイトル(役職)で求められている能力より大幅に優れたパフォーマンスを出していただきました、ということを言われました。
ここまで来るのに1年かかりました。

コンサル未経験者が最高評価を得るまでに必要なこと

コンサル未経験者が最初にすべきことは以下の2つです。

  • コンサルに求められる考え方(思考)を鍛えること
  • 自分なりのアウトプットのテンプレートを蓄積すること

これは、どちらが先ということはないと思います。
私も必死で走りながら身に付けました。
この2つが身につけば、なんとかコンサルタントを続けることができます。
もし、コンサル未経験で、コンサルへの転職を考えている人がいれば、こういう私みたいなパターンもあるということで頭の片隅に置いてもらえれば幸いです。

かなり長文となりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。